以前の記事で、「パワハラ」と一括りにしているが、それって犯罪ではないか?と書いたが、私はずっとそう思っていた。 そもそも仕事をする上で、大声で怒鳴ったり、感情的になって物を投げたり、他人の容姿やプライベートなことを人前で嫌味ったらしく話す必要は全くない。 嫌な奴が出世したのか、出世したら嫌な奴になったのか、どちらかわからないが、いずれにしても、そんな奴らを評価した上司が存在するという時点で残念でならない。

◇私を苦しめたパワハラの実態:第二の「彼」
さて、私の勤めている会社には、本当にどうしようもないお偉いさんがいる。パワハラをするために会社に来ているのでは?と思うくらいだ。彼のパワハラ内容は以下の通りである。
・すぐに感情的になり怒鳴る。
・叫びながら机を叩いて威嚇する。
・繰り返される執拗な詰問。
・人前で他人の容姿を馬鹿にする。
・私一人だけ、フロアが違うにもかかわらず、出社後に彼のデスクの前に行き、挨拶の後に今日のスケジュール報告を強要される(ご機嫌斜めだと無視されるか、事あるごとに文句をつけ怒鳴られた)。
最後の一つは本当に理由がわからなかったが、私一人だけやらされていた。 被害を受けていたのは主に、その人物より年下の男性社員たち(もちろん私も含む)。驚くのは、堂々とフロア内の人目につくところでパワハラを行っていたことである。 今思うと、それが「俺は強くて偉いんだ」という、周りに対してのアピールだったのかもしれない。何らかのコンプレックスがあったのか、そもそも自分に自信がないタイプだったのか、またはその両方なのかはわからない。ただ、やっていいことではない。絶対に。

◇限界からの直談判:録音と問いかけ
私は限界だった。 朝から私だけ挨拶を強要され、ご機嫌を伺い、恫喝に耐え、他の社員が被害にあっているのを見て見ぬふりをする日々。 何がきっかけだったかは忘れたが、あまりにも理不尽で頭にきたので、次の日から朝の挨拶に行くのをやめた。それが3日ほど続くと私の様子が気になったのか、別室に呼ばれ、2人で面談することになった。
別室に呼ばれる際、私はこっそりスマホの録音ボタンをオンにしてポケットに入れた。 面談の中で、もうパワハラに耐えられない旨を洗いざらい言った。 具体的には、以下のような内容だ。
・挨拶という儀式の強要をやめてほしいこと。
・怒鳴り叫ぶのをやめてほしいこと。
・感情的に机を叩く威嚇行為をやめてほしいこと。
・それが嫌になって会社を辞めた社員がいること。
まさか面と向かって言われるとは思っていなかったのだろう。彼は動揺しているように見えた。 私はどうしても聞きたかった質問を投げかけた。それは、上述した問題行動を「自身でパワハラだと認識した上で行っていたのか」というものである。 彼の答えは「YES」だった。 「パワハラだと認識した上で行っていた」とはっきり言われたのだ。 自分は絶対で、下の人間は逆らわない(逆らわせない)とでも思っていたのだろう。彼は最後に「俺みたいにはなるな」と謎の助言を残して退出していった。

◇警察への相談:録音データを手に
私の手元には、パワハラを認めた録音音声がある。今までのパワハラ行為をひとこと謝罪された程度では到底納得がいかない。私は早速、録音データを持って最寄りの警察署に相談に行った。 最寄りの警察署は私の地域の中ではかなり大きい方で、正直入りづらかったが、とりあえず中に入った。
中に入ると受付のような小窓があり、そこの職員へ「パワハラ被害の相談をしたい」と伝えると、「はぁ?パワハラ?」と、ものすごい嫌そうな顔で言われた。 正直、本当にびっくりした。 確かに警察はサービス業ではないが、そんな嫌そうな顔をするだろうか。
その後、ロビーでしばらく待たされると、一人の年配の男性が近寄ってきて、「パワハラ受けたんだって?」と、人の出入りがあるロビーで、割と普通のボリュームで声をかけてきた。ここの警察は相談者のプライバシーとか考えないものか、と疑問に思った。 こちらとしては、結構な勇気を持って相談しているのだ。 年配の男性はロビーにあるテーブルと椅子を指差し、「ここに座って話を聞かせて」と言った。 いや、だから、みんないるし人の出入りも多いし。そんな中で被害相談をしなければならないのか、と。もっとセンシティブな内容の相談だったらどうするんだ、と。 いずれにしても、さすがにそれはないだろうと思ったので、「こんなに人が多くいるところでは話したくないので、個室はありませんか?」と言ったら、個室を用意してくれた。
年配の男性は警察官ではなく「相談員」という方だった。どうやら警察職員のようだが、警察官に話すつもりで来ていたので、いくら警察職員だろうと気持ち的にはちょっと複雑だった。 その後、個室で相談員にパワハラ被害の経緯を説明し、改めて警察官を呼んでもらい、さらに説明を重ねた。

◇警察相談で分かった現実:被害届提出の壁
ここで重要なのは、「パワハラ被害を受けたことで被害届を提出し、加害者を罰することができるか」という点だ。 警察官の方はとても親身に話を聞いてくれた。しかし、被害届の提出は現実的ではないと言われた。 理由は以下の通りである。
・暴力を振るわれた、またはそれにより怪我をした事実がないこと。
・恫喝や暴言があっても、脅迫のような具体性の高い内容でないと被害確認が難しいこと。
・客観的な証拠が不足していること(承認音声だけでは、文脈や状況の証明が難しい)。
警察官からは、「パワハラ被害について、社員や関係者に事実関係の確認をすることはできる」と言われた。ただし、当然私が警察に被害相談をしたということが全て公開される前提である。
つまり、「パワハラをした」と認めた音声があったとしても、実際にパワハラを行っている客観的な証拠(パワハラの具体的な内容や行為そのもの)がなかったり、暴力を受けた・怪我をした等の具体的な被害がない限り、警察に相談しても被害届を出すことは難しいということがわかったのだ。
もしこれを見ている人の中でパワハラ被害を受けている人がいたら、必ず証拠を取ってほしい。スマホの録音が一番簡単だと思う。
証拠を持っているだけで、「何かあったらこの証拠を出してやる」という気持ちにもなれるので、少し安心できる。
警察への相談で、私は現実の壁を知った。だが、それで終わりではない。ブラック企業での理不尽に耐え続ける必要は全くないのだ。理不尽に立ち向かうには、感情的になるのではなく、冷静な判断と、何より確かな「証拠」という最強の武器が必要だと痛感した。
諦めずに次なる一手、労働基準監督署への相談については、また別の機会に詳しく語ろう。
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